おとともじについて

おとともじについてかんじたことをもじであらわしています。

むかしの人の袖の香ぞする

伊勢物語の六十段。 『むかし、男ありけり。宮仕へいそがしく、心もまめならざりけるほどの家刀自まめに思はむといふ人につきて、人の国へいにけり。この男宇佐の使にていきけるに、ある国の祇承の官人の妻にてなむあると聞きて、「女あるじにかはらけとらせ…

ふゆのあさ

あさ。 めがさめると、 きのうのつづきのわたしと、 きのうのつづきのせかいが、 そこにはあった。 けれど、 『おはよう』 というあたらしいひへのしゅくふくのことばは、 きのうまでのうつくしさだけをそっくりうつして、 きょうをあたらしくうまれかわらせ…

0(ゼロ)の日のわらいごえ

わたしがあなたたちを生みだした、あの朝。 わたしのうちにもそとにも、ただ、よろこびしかなかった。 あなたたちがわたしから生まれいでた、あの朝。わたしのうちとそとに、ただ、よろこびだけがあった。 わたしとあなたたちが生まれた、あの朝。わたしたち…

イアン・ボストリッジ、現代の錬金術師

"Ich liebe dich, mich reizt deine schöne Gestalt, Und bist du nicht willig, so brauch ich Gewalt." 『わたしはお前が好きだ、その美しい姿がわたしを魅了するのだ。気が染まぬなら、力づくでも連れて行くよ!』 イギリスのテノール歌手、ボストリッジ…

【読書ノートからの断片1】顔のない裸体たち:平野啓一郎著

愛を拒絶された(もっと直接的に言うのならば“振られた”)男が取る行動に、ふたつ、ある。 ひとつは、顔を赤らめ、その場からすぐに立ち去る、というもの。もうひとつは、全身を怒りで赤く染め、『拒絶』という女側の理不尽で身勝手な行為に対して復讐の斧を…

わがせしがごと

『仕事とわたし、どちらが大事?』 この問いかけを男性にするうちは、たとえその男性と子をなし、母となったのちも、その女性は男性の本質を理解できていないのではないか、そんなふうに思う。 男性にとって『仕事』は自己実現というよりも、自らの社会的生…

祈り

愛は、祈り。 祈りは、愛。 『真幸くあれ』と祈るとき、祈りは熱をもった身体から生まれ、その清潔な熱は、意志をもった微かな粒子となって、宙を、放射状にひろがってゆく。 『わたしを愛して』と祈るとき、祈りは潤んだ夢のような光をつくり、その潤んだ光…

秘めごと

赤い木の実の白い秘密 ひと口齧れば、たちまち空へ ひと口齧れば、甘い。ふた口齧れば、…………。 赤い木の実はやさしい罠。その身の中は、深い迷宮。 ひとたび触れれば、 ふたたび触れれば、………。 梢を渡る風の、葉擦れの音。嗤うよ。歌うよ。 E.サティ:グノ…

樂苑

帳がおりて、 夜闇みちても、光はつねにさざめくよ。 ものは見えずとも、まなこつむって、その姿を見る。 動くもの、動かぬもの、すべてのものは遊ぶ。その蓮華の御足に。 罪を負い、うたううたは、ただ歓喜に満ちた寂静(しずけさ)。 春は過ぎ、夏は過ぎ、秋…

THE FOOL ON THE HILL

甘い蜜はすべて呑みこんではいけない。 それは、甘すぎるのだ。 べたべたするような真夜中。 毒を、くれ。毒を。この夜を美しく染める、世界でいちばん清らかな毒を。 プリミティヴなリズムを、くれ。強烈なリズムを。極彩色の轟音で恍惚(ヘヴン)へ導け。 …

在るべき場所に

昨日、 朝、起きたとき、ぼくは、檸檬を、齧っていた。 昨日、朝、起きたとき、ぼく、は、檸檬を、齧っていた。 昨日、朝、起きたとき、ぼく、は、檸檬、を、齧っていた。 昨日、朝、起きたとき、ぼく、は、檸檬、を、齧って、いた。 昨日、朝、起きた、とき…

E.I.I.R.P.による印象【弐】

頭のなかで、 ふたつの色が、躍りだすんだ。 それらは、白と黒のような気もするし、赤と青のような気もする。頭のなかの目では捉えられないようなんだ。この色彩たちは。 針やはらかに降る春雨に、二尺伸びたる檸檬の芽。ぼくの蛹は蝶になれずに死んでった。…

天国より野蛮

天国は、有刺鉄線の向こう側に咲き乱れている。 しかし、それは、そこへゆくために、ほんとうに、越えなければならないものなのだろうか。そして、それは、越えようとしたときに、ほんとうに、わたくしの白い膚を紅い血で染めるのだろうか。 かつて、無理矢…

陽の訪れを待ちながら

草も木も眠りに沈み、暫く。 わたくしは、炭酸水みたいに、ぴちぴちと弾けた爽やかな心持ち。 どす黒の慾望が、『お前を汚してやる』と、言う。 それは愚かな不完全さだ。 優位に在るものは劣位に在るものを支配する。位の優劣は、外界の神が定めたものでは…

あなたがいらっしゃるだけで

あなたがいらっしゃるだけで、 ただあなたがいらっしゃるだけで、ひとりのおんなのこころはあたたかくなる。 あなたがいらっしゃるだけで、ただあなたがいらっしゃるだけで、ひとりのおんなのこころはしあわせになる。 しずかにみたされる。 あなたのいらっ…

暁のしあわせ

愛してもいない男の所有物として在ることほど、女の尊厳を粉々にするものはない。そのことを、わたくしは、身をもって知っている。 だから、わたくしは、ただみずからのこころだけに拠って、愛すべきひとをただひとり、選ぶのだ。 だから。 もしもあなたが、…