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おとともじについて

おとともじについてかんじたことをもじであらわしています。

秘めごと

赤い木の実の白い秘密

ひと口齧れば、
たちまち空へ

 

ひと口齧れば、
甘い。
ふた口齧れば、
…………。

 


赤い木の実はやさしい罠。
その身の中は、
深い迷宮。


ひとたび触れれば、

ふたたび触れれば、
………。

 

 

 

 

梢を渡る風の、葉擦れの音。
嗤うよ。
歌うよ。

 

 

 

 

 

E.サティ:グノシエンヌ第三番に作詞。(2003)

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樂苑

帳がおりて、

夜闇みちても、
光はつねにさざめくよ。

ものは見えずとも、
まなこつむって、
その姿を見る。

動くもの、
動かぬもの、
すべてのものは遊ぶ。
その蓮華の御足に。

罪を負い、
うたううたは、
ただ歓喜に満ちた寂静(しずけさ)。


春は過ぎ、
夏は過ぎ、
秋は過ぎ、
冬が来て、
それも過ぎ去り。

とどまることなく、
時は廻るよ。
ただ、滅ぼすために。

動くもの、
動かぬもの、
すべてのものは、
受く。
そのつらきさだめ。

生まれては産んで、
そして死に、
うたう。
歓喜(よろこび)のうたを。

 

 

 

 

(2002)

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THE FOOL ON THE HILL

甘い蜜はすべて呑みこんではいけない。

それは、甘すぎるのだ。

べたべたするような真夜中。

毒を、くれ。
毒を。
この夜を美しく染める、
世界でいちばん清らかな毒を。

プリミティヴなリズムを、くれ。
強烈なリズムを。
極彩色の轟音で恍惚(ヘヴン)へ導け。


神は死んじゃいない。
愛も死んじゃいない。

そのことが希望を抱かせるから、
深く絶望に沈むのだ。

それでも、
神は、
愛は、
たしかに存在するのだ。

だから、
全てを、
くれ。

美も醜も、
愛も殺意も、
すべて抱きしめたいんだ。

丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、
丘のうえの賢者、
丘のうえの阿呆、


丘のうえの。

 

 

 

 

(2002)

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在るべき場所に

昨日、

朝、
起きたとき、
ぼくは、
檸檬を、
齧っていた。

昨日、
朝、
起きたとき、
ぼく、
は、
檸檬を、
齧っていた。

昨日、
朝、
起きたとき、
ぼく、
は、
檸檬
を、
齧っていた。

昨日、
朝、
起きたとき、
ぼく、
は、
檸檬
を、
齧って、
いた。

昨日、
朝、
起きた、
とき、
ぼく、
は、
檸檬
を、
齧って、
いた。

『…いや、
むしゃぶりついていたんだよ!』

どこまでも美しくきたならしい。
どこまでも清潔で淫らな。

檸檬を弄んでいたのは、
ぼく。
ぼくでなく、あたしだった。

檸檬
を、
弄んで、
いた、
の、
は、
ぼく、
で、
なく、
あたし。

あたしだったの?

Yesterday, I woke up sucking a lemon.

 

 


【Everything in its right placeの印象による】(2016)

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E.I.I.R.P.による印象【弐】

頭のなかで、

ふたつの色が、
躍りだすんだ。

それらは、
白と黒のような気もするし、
赤と青のような気もする。
頭のなかの目では捉えられないようなんだ。
この色彩たちは。

針やはらかに降る春雨に、
二尺伸びたる檸檬
ぼくの蛹は蝶になれずに死んでった。
だれも知らなかったんだ。
ぼく自身でさえ。
だって、服の上から、なにがわかる?

ああ、
それにしても、
蜜は甘かったろう。
きみの。

ぼくは、
もう、
ゆくよ。

歯車ですら、
もう、
回転しないんだもの。

ぬぅ、
ぬぅ、
ぬぅ、
ぬぅ、


『あ』


…!

なんだ?
この紡錘形の、
爽やかないやらしさは。


There are two colors in my head.
What is that you tried to say?
What was that you tried to say?

 

 

 

 

(2016)

天国より野蛮

天国は、有刺鉄線の向こう側に咲き乱れている。

しかし、それは、そこへゆくために、ほんとうに、越えなければならないものなのだろうか。
そして、それは、越えようとしたときに、ほんとうに、わたくしの白い膚を紅い血で染めるのだろうか。

かつて、無理矢理に捻じ曲げられて、潰げた、わたくしの、骨。
しかし、犯されたわたくしの骨は、光を放った。
その光は、遍く宇宙を照らした。
癒しは一瞬にわたくしを襲ったのだ。
それは、とても容易いことだった。
気づきさえすれば、よかったのだ。

わたくしは、戯れにだれかを愛したことはなかった。
捻じ曲げられた骨でさえ、潰げることによって、その手に報いた。
わたくしは、その手を殺した。
その手の持ち主ですら、永遠に気付かぬように。
いつも、わたくしの世界の内がわからのみ、愛は、生まれた。
わたくし以外の誰にも、それは、生み出せなかった。

ときめきと、
やすらぎと、
ひとつになりたいという慾望と、
ひとつでありつづけることはできないという現実による哀しみとが、
いつも、
その始まりからあった。

すべてを引きうけ、愛は生まれる。

すべてが、いま、かたちとして在ることは、奇跡なのだ。

わたくしのうつくしいからだと、
わたくしのみにくいこころも。

 

 

 

(2016)

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陽の訪れを待ちながら

草も木も眠りに沈み、暫く。

わたくしは、炭酸水みたいに、ぴちぴちと弾けた爽やかな心持ち。

どす黒の慾望が、
『お前を汚してやる』
と、言う。

それは愚かな不完全さだ。

優位に在るものは劣位に在るものを支配する。
位の優劣は、外界の神が定めたものではない。
それを定めたのは、おまえ自身、だ。

高潔さは浮かび上がり、
愚劣さは沈む。

ずぶ、ずぶ、ずぶ。
腐った底なし沼だ。

わたくしは、わたくしの心が不潔になっては生きる意味がない、と、いまだ少女のような心持ちで思うのだ。
一切の不浄を、一点の濁りをも赦さぬ潔癖の処女のような残忍さでもって。

それだからこそ、
あなたに、
心まで、
いだかれてしまいたい。

おんなであることによって辱しめを受けなければならないのなら、
おんなであることによってしか知ることのできない悦びを知りたい。

わたくしのその悦びは、わたくし自身によって完結することはできない。

わたくしは、
ただ、
待っている。
英国式の庭園で。
陽の訪れを待ちながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

(2016)